『体験で理解するデザイン・プロセス』
〜みんなで創るUXデザインワークショップ〜
第11回FIXプロモ研究会セミナーレポート

講演内容

体験で理解するデザイン・プロセス 〜みんなで創るUXデザインワークショップ〜

日時:2019年4月26日(月)場所:DMM.com 金沢南町事業所 9Fイベントスペース

講師荷方 邦夫(にかた くにお)様
金沢美術工芸大学 美術工芸学部 准教授

1972年熊本県生まれ
筑波大学大学院心理学研究科中退。博士(心理学)。認知心理学・教育心理学を専門とし、「わかりやすさ」をキーワードとして、その理解と支援の解明をテーマとして研究を行う。現在は文部科学省・科学技術振興機構の「革新的イノベーション創出プログラムCOI)」プロジェクトを始めとした、デザインや感性認知に関する研究を中心に行う。著書「心を動かすデザインの秘密(2013:実務教育出版)」「『使える』教育心理学(2011:北樹出版)」等多数

助手:大野(おおの)様
DMM.com デザイナー

※今回の講義の模様は本ページ下部にて動画でもご覧いただけます。

1.デザインもう一度おさらい

普段の座学受講型と変わり、
プロモ研究会としては初めてのワークショップスタイルで行いました。

まずは前回の荷方教授のプロモ研究会「クリエイターのためのデザイン心理学Up to Date」より、
おさらいをどうぞ。

2.経験の質を変えるデザイン

2-1.まずはお絵かきをしてみよう

テーマは「お子さまランチ」。配られた白い画用紙と色ペンを使い、お子さまランチを知らない人に説明する要領で、参加者各々にお子さまランチを描き始めました。

10分後、3~4名グループの各テーブルで描いたお子さまランチを見せ合い、内容を参加者同士でシェア。

その後、荷方教授と助手の大野さんが参加者の絵から気になったものをピックアップし紹介していきます

ユニオンジャックの旗が立つお子様ランチ

「オムライス」。。何となく気持ちはわかる

食べる人まで描いてあるお子様ランチ

そこで気づくのは、“お子さまランチ”ひとつでも思い浮かべるものは人それぞれ。と同時に、多くの共通点も見えてくるということ

  • プリンやフルーツなどのデザート
  • オレンジジュース
  • エビフライ
  • おまけのおもちゃ
  • 料理の上に乗せる小さな国旗
    etc…

「われわれは、それ(デザインされた世界)を経験する前から、その世界についての固定した知識を持っている」
世界についての知識 = メンタルモデル

世の中にはお寿司や和食のお子様ランチも

この”世界”から急に外れたもの
例えば”お子さまランチ”なのに急に、”ご飯”と”お味噌汁”と”冷奴” が出てきたら、大人も子どももそれを”お子さまランチ”とは認識しないであろう

それが「私たちが事物の構造や働きについて持つ知識」であり、実際の”お子さまランチ”もその知識をもとにして作られていることが多い。

フレンチ料理店、温泉旅館、高級レストランなどにも、世の中には趣向の凝らされた”お子さまランチ”がいくつもあります

 

そして今回の本題

『 デザインの力でこれまでとは違う「お子さまランチ」を創り出す 』

 

我が子を連れて行ったレストランで注文した”お子さまランチ”。実際には子どもが食べ進まないメニューも結構ある。荷方教授も娘さんを連れて出た時にそんな経験をされたそうです。

親が「何食べたい?」と聞けば、、子どもは「お子さまランチ!」と答えますが、、、

  • 本当に好きなのか?
  • おもちゃが欲しいだけ?
  • 全部食べられるの?

など、割とあやふやな点もあります。だけど子どもたちは比較的”お子さまランチ”にポジティブな印象があります。

子どもたちのお子さまランチ経験は、何によって変わり、どんなことに魅せられるのか

2-2.UXを変えるデザインを考えよう

とここで、前回の荷方教授のプロモ研究会でもお話ししたこちら
UX: User eXperience その人の経験、経験に伴う価値のこと

(ex.)コーヒーのUX(ユーザー・エクスペリエンス)
コーヒー豆の価格:25セント程度
コーヒーの原価は缶コーヒーからホテルのラウンジまであまり変わらないのに販売されている価格に大きな開きがあります。

  • 缶コーヒー(130円)
  • スタバ(400円)
  • ホテルのラウンジ(1000~1200円)

 

提供されているのは、「サービス」の違いなのか?

1.風景などの環境(立派な日本庭園、お洒落なインテリア…等)
2.希少性の高い「経験」(高級な空間で、ハイソサエティな人に囲まれ…等)
3.ユーザーが生成する「意味」(妻の誕生日にはこの店に、初めてのローマ旅行のあのジェラート店…等)

私たちはそのもの単体だけに価値を見出すのではなく、経験というものに一番価値を感じているということを1999年にB.Joseph.2 Pineさん、James H. Gilmoreさんという方々が “経験経済”と提唱し始めた。

「経験が一番理財のあるところ」

その後、Bernd H. Schmittさんが2003年に ”経験価値”カスタマーエクスペリエンスを言い出した。
そして実際にこの考えが日本に入ってきてから10年ちょっとだが、UXという考え方は国内でも既に広く知られている。

教授の経験談、

〜初めて出来た恋人と行ったクリスマスディナー、今から考えればそこまで高級店でもなかったのだが、当時の自分としては勇気を出し選び奮発した場所。その店で得た ここは最高・美味しい・贅沢感・素晴らしいなどの経験〜

例えば、そういった経験をお客様に与えることで、人を呼び、常連さんが生まれていく。

商品を作る時は、“経験をつくる”ということを意識する事が大切です。

それらを踏まえ、今回の課題では利用者の経験が変わり・後々まで残る・魅力的な思い出になるような”お子さまランチ”とは何かを考え商品開発をしてみましょう!

2-3.デザインプロセスを知る

「経験の質を考えるデザイン」- 誰でもできるステップ

  1. デザインで何をしてみたいか
  2. アイデアの種を探しに行こう(実際に足を運んだり、人に聞いたり、検索したり)
  3. コンセプトを決めよう
  4. ざっくり(←これ大事)作ってみよう(プロトタイピング)

やってみよう!実践!

①グループでコンセプトの意見交換
②自分のアイディアの絞り込み

※今回は屋内着席のワークショップなので、種の探し方はスマホなどでGoogle検索!
画像検索、検索ワードに「-」(マイナス)で除外ワード、を使うと便利。使えるものは何でも使いましょう。

①グループでコンセプトの意見交換(約10分)様々な意見を出し合います

1.そもそも子供が喜ぶことって?
2.親の主導権も強いから親目線も大事
3.本当に食べられるメニューはそんなに多くない
4.楽しめるゲーム的なこととか?
5.自分で作る経験も良さそう …など

周囲の意見を取り入れ自分のアイディアも軽く出てきたところで、ここからは各参加者(今日はデザイナーになりきり)個人個人で作業します

②プランの決定(5分)+自分のアイディアの絞り込み(20分)

プロトタイプの利点を活かし書いたり消したり、ディテールはそこまでこだわらなくても良い、良いものを提案したいということがちゃんと伝わればそれがデザインになっていく。

思い浮かんだものをメモに取っていき、デザイナーが思い思いに新しい”お子さまランチ”を絵に・形にしていきます。そして各自テーブルグループ内で、まずはシェア!

コツはお互いに褒めあうこと、コンプリメント(賞賛)シャワーを与える。これは組織の中でより多くのアイディアを出すときに効果的。
自分以外のデザーナーが考えた新しい”お子さまランチ”に出会うことで驚いたり、参考になったり、新しいアイデアが出てきたりします。

最後は、幾つか全体にシェア。
この様なデザインのプロトタイプが生まれました。

1.メニューは現実的に子どもが食べられるものだけに絞る
2.可愛いミニお皿で親子や兄弟とシェアできる

1.子どもは食べたいものがないから”お子さまランチ”を選んでいるだけなのかも?
2.ミニカーなどのおもちゃレールに子どもが選んだ好きな具材がどんどん流れてくる
3.ステージアップしていくゲームの中でご飯を食べていく、アイテムゲットしていく様な
→エデュテインメント 教育+エンターテインメント


”お子さまランチ”ならぬ”お子さまウン◯”  カラフルに調理されたそれらを並べ、見た目に反した美味しさ!三ツ星シェフ監修



プレートや食材の模型を選んでカスタマイズ、その後そのメニューが実際に出てくる。最後にその模型ももらえる、収集するためにまた来たくなる
→子供が触るのは模型なので、汚れたりこぼしたりしない、安全、自発性を産む、現実的なアイディア


実際に食べないものは3Dプリンターで偽物を作成してお皿に!本当に食べられるのはポテトとジュースで十分(笑)
→偽物でも良いという振り切ったアイディアは楽しい、デザインは商品開発作業とは違い、どんなアイディアでもたくさん出す方が最終的に成功につながる、ブレインストーミング

などなど、びっくりするような、または実際に商品化できそうなアイディアも短い時間の中に多く出ました。

3.まとめ 発想から実現までの距離

皆さんも今日から”UXデザイナー”

今回体験した課題は遊びのように感じるかもしれないが、デザインの現場はこのような状態もままあるという事。

◯誰もが「デザイナー」の現代のために

      • 細かなテクニックは後発的に付けられる
      • いろんなアイディアやニーズを聞きながら作る
      • 日常で得られるデザインの種
      • 自分の内側に題材をいろいろと持っておく

◯クリエイティビティ

      • 知識やイメージを組み合わせて「新規で価値をもつsomething」を作り出す活動
      • 知識やイメージの組み合わせは無限の問題空間を作る
      • 知識やイメージを自己の内側に多くもつことは、クリエイションにとって「有利」→しかもそれらが自由に使える・操作できるようになっているとfantastic!
そんな多くのクリエイティビティ・人を集合させたネット上のサービスや施設も増えている。

minne(クラフト作品のマーケット), BASE(無料ECサービス), cookpad(レシピの作ってみた系), SKIMA(個人スキルのマーケット), DMM.make(モノづくりプラットフォーム)

海外の一部の企業が販売している様な、ピンポイントな人だけが欲しがるような製品を売ることも可能。
Personal Publicaton(パーソナルパブリケーション)を活かす

動画配信サービスのモノづくりログ, Youtube, ニコニコ動画のやってみた系を覗くと知識が蓄積されている。
生まれた発想をどこにでも持って行ける時代、3Dプリンタでアイディアを形にできる!

今回体験したステップのコアを覚えておけば、あとは発想力、なんでも試してみることで、なんでもできる様になる時代。
発想から実現するまでの距離は日に日に近くなっている。

■レポート:株式会社フィックス川田 悠香里
最後までお読みいただきありがとうございました。株式会社フィックスの映像事例集も随時更新中ですので是非ご覧ください!


※荷方先生のご厚意により、フルバージョンの講義を動画にてご覧いただけます。

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